骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、骨の強度が低下してもろくなり、骨折の危険性が高まる病気です。骨の強度は、「骨の量(=骨密度)」と「骨の質」の2つの要因によって決まり、骨密度が70%、骨質が30%関与していると言われています。
出典: 財団法人 骨粗鬆症財団
出典: 骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015
骨粗しょう症には、原発性と続発性の2種類がありますが、一般的に広く知られているのは、原発性骨粗しょう症の方で、これは主に閉経後骨粗しょう症を指します。加齢、女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏、運動不足などの生活習慣が原因としていると考えられます。続発性骨粗しょう症とは、内臓に病気があったり、他の病気の治療薬として使用しているお薬がきっかけとなったりすることで起きるものを指します。
骨粗しょう症は骨折しやすくなるだけでなく、体全体の体調不良を招きやすいですが、普段の生活からは骨粗しょう症が症状の原因だとはわからないことがほとんどです。
骨がもろくなってしまうことで最も問題となるのは、転倒やくしゃみなどのわずかな衝撃でも骨折しやすくなることです。骨粗しょう症によって骨折しやすい骨の部位としては、背骨や股の付け根(大腿骨)、手首などが挙げられ、特に大腿骨や手首の骨折は、手術が必要な場合が多いというのが現状です。一方で背骨の骨折は、手術が必要な場合は少ないですが痛みのため長期間起き上がることができないなど、その後の人生に甚大な影響を及ぼします。
また、骨折の後遺症として体が動かしにくくなることや、骨の変形によって全身にさまざまな悪影響が及ぶこともあります。たとえば、背骨が押しつぶされるように折れる(圧迫骨折)と、背中が丸くなることがあるほか、それによって消化器や呼吸器などの内臓機能に障害が現れる恐れがあります。
そして骨折により動くことができる範囲が狭くなり、さらに骨がもろくなるという悪循環に陥ることがあるため、早めの対策が必要です。
骨粗しょう症の診断は、骨密度測定により行います。具体的にはDXA (デキサ) 法が一般的です。DXA法は、エネルギーの低い2種類のX線を使って骨密度を測定する方法です。腰椎(背骨のうち、腰に近い部分)と大腿骨近位部(足の付け根)の2つの部位を測定します。このほか、X線やCT検査、MRI検査といった画像検査、血液検査や尿検査による骨粗しょう症の血液マーカーの測定、身長測定が実施されることもあります。
DXAの結果、骨粗しょう症と診断される一般的な指標は「骨密度が20~44歳女性(YAM:Young Adult Mean)の70%以下」です。その他にも複雑な指標を用いた結果、骨粗しょう症と診断されることがありますので、診察時にも詳細にご説明いたします。
骨粗しょう症の治療
食事療法
乳製品、大豆、魚など積極的なカルシウム摂取が必要です。もちろん思春期までにカルシウムを十分摂取しておくことは重要ですが、骨粗しょう症とわかってから始めても、その後の骨折予防には効果がありますので、遅すぎることはありません。
ビタミン補充
ビタミンはそれだけで骨を強くする働きがあるとともに、カルシウムの吸収を助ける働きもあります。ビタミンC・D・Kがその代表であり、食べ物・飲み薬で補充することができます。
適度な運動
激しい運動は必要ありませんが、1日30分のウォーキングなどは骨密度の維持や骨折防止に非常に重要です。
内服治療、皮下注射治療
①:ビスホスホネート製剤
骨吸収という、骨粗しょう症の方で見られる、骨をもろくする働きを弱めることができます。効果が長持ちするため、1週間に1回や1か月に1回のお薬が中心です。飲みやすいようにゼリータイプのものもあります。飲んだ後30分間は体を横にしないように注意が必要です。
大腿骨の骨折の危険性が高い方に対する効果が特に大きく、第1の治療選択になることが多いです。
②:女性ホルモン製剤
閉経前後の方に対して、更年期障害の症状改善に加えて骨粗しょう症の予防や治療に使用します。
③:副甲状腺ホルモン製剤
副甲状腺ホルモンは、甲状腺という首にある臓器の裏にくっついている小豆大の副甲状腺という臓器から出されるホルモンで、骨密度に大きく影響します。骨折の危険性が特に高い方には、このホルモンを皮下注射で補うことがあります。
④:カルシウム製剤
骨の構成成分を直接補う目的で内服します。他の治療薬と組み合わせて行うことが多いです。
⑤:抗体製剤
デノスマブ(商品名:プラリア)とロモソズマブ(商品名:イベニティ)という、2種類の抗体製剤があります。いずれも皮下注射薬です。骨粗しょう症の危険性が高いもしくは、骨折をしてしまったことがある方に使用することがあります。デノスマブは、骨吸収を抑えることで骨をもろくなりにくいようにします。ロモソズマブは骨吸収の抑制に加えて骨形成という、積極的に骨の強度を高める働きがあり、新しい骨粗しょう症の治療薬として注目されています。
また、近年では「ロコモティブシンドローム」という、運動器の障害のため立ったり歩いたりする能力が低下した状態が、骨粗しょう症と並んで骨折の危険性を高めてしまうことも分かっており、加齢に伴う骨密度の低下、筋力の低下、関節疾患などは切り離せない関係になっています。
当院では、筋骨格系の疾患により将来、要支援・要介護状態になってしまう危険性を下げるための指導も行っておりますので、骨粗しょう症その他、運動器の疾患についての予防・治療について、お気軽にご相談ください。
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