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呼気一酸化窒素濃度(FeNO)検査とは

呼気一酸化窒素濃度(FeNO)は、吐いた息に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定して気道の炎症状態を評価することで、喘息(ぜんそく)の診断や治療方針に役立つ非常に重要な検査です。

※喘息とは、初期症状として長引く咳や喉の違和感などがありますが、治療せず放置すると気管支の慢性的な炎症により気道が狭くなり、呼吸困難を引き起こす病気です。詳細については「喘息|長引く咳の治療」ページをご覧ください。

喘息とFeNOの経緯

以前は喘息の方の気道の炎症状態を評価するという同様の目的を達成するために、喀痰好酸球検査が行われていました。ただし、全ての患者様から適切な痰が採取できるとは限らない上、痰の採取後から検査を行うまでに複雑な処理が必要でした。そこで2013年以降、FeNO検査が保険診療として施行可能になりNOという体の中で生み出される物質を利用してクリニックでも簡便に検査を行うことができるようになりました。

喘息とNO

喘息の方の呼気には、他の方と比較して多くのNOが含まれることが明らかとなっています。もともとNOは気道にある細胞で生成されている物質ですが、喘息の方では気道に慢性的な炎症が起きており、炎症成分(サイトカインと呼びます)が気道の細胞を刺激し続ける結果、NOを大量に産生されます。日本人のぜんそくでない方のFeNO値は平均15ppb(正常上限は37ppb)と考えられています。下のグラフは成人240人のFeNO値を測定した場合、平均値が15.4だったことを指します。Mean +2SDとは、簡単に言うと被験者の95%の方(つまりここでは240人中228人)の測定値が36.8ppb以下だったことを指し、医学の世界ではこの95%の人が入る数値を「基準値」と呼び、「正常上限値」であるとされます(健康診断などで記載されている基準値もこのように定められています)。

参考文献:気管支喘息におけるFeNO測定の意義 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌2019年28巻1号66-71

ただし、FeNO値は測定のやり方や、ステロイド薬の使用、アレルギー疾患(特に花粉症などのアレルギー性鼻炎)、喫煙などにより高く出たり低く出たりと影響を受けることが知られています。従って、実際のところFeNO値は一人ひとりの背景事情を考慮して正常値は個別に決まると言うことができます。

FeNOと喘息治療

参考文献:呼気NO測定ハンドブック2014

FeNO値を指標に喘息治療を行った場合、喘息発作を十分抑えながらぜんそく治療の中心である吸入薬の使用量を減らすことができると言われています。吸入薬にはステロイド剤が含まれており、確かに飲み薬と比較すると副作用の頻度、程度ははるかに少なく済みますが、使用薬剤は少ないほど望ましいですから、当院では積極的にFeNO検査を施行し、治療方針や減薬の参考にさせていただいています。例えば、一般にFeNO値が低値(25ppb未満)であれば「好酸球性気道炎症」(これは喘息の方の典型的な気道炎症の状態を指す言葉です)は否定的でステロイド薬を増量・維持することの有効性が低い可能性があるため、喘息症状が安定している場合には積極的に吸入薬を減量しています。少し複雑な内容ではありますが、喘息の方はステロイド剤が特に有効な好酸球性気道炎症がある方が多いですが、ステロイド剤が効きづらいタイプの気道炎症が中心の方もいます。

従って、好酸球性気道炎症の状態を数値化するFeNO値が低くても、喘息の状態にある方は多くいらっしゃいますので、当院でFeNO検査を行った場合には数値の結果だけでなく、皆様の状態を前提とした検査結果がどのような意味であり、どのような気道炎症のパターンであるかを詳しく評価させていただきます。FeNO値が皆様の平常時の数値より高くなることは肺年齢の悪化とも相関することがわかっているため、将来の呼吸機能を維持するためにも定期的な検査と数値の安定化を目指すことが重要です。

正しく測定するために

参考文献:呼気NO測定ハンドブック2014

上のグラフの左側〔a〕では、3回の測定で息を吐く時間(横の軸です)とともにFeNO値(縦の軸です)が安定し、正しく測定できている事を表しています(プラトーとは、その時点でFeNO値が安定して信頼できる測定結果が出たという意味です)。一方で右側〔b〕では1回目と2回目で波形が大きく異なります。特に1回目は息を吐き始めた直後にFeNO値が高値になっていますが、これは検査の際に息を吐く前に息を最大まで吸っていただくのですが、口からではなく鼻から吸ってしまうと起きる現象です。鼻の中にはもともと多量のNOが含まれるため、鼻から息を吸い口から息を吐いた場合に通常よりFeNO値が高く出てしまいます。またFeNO値は息を吐くスピードにも影響されるため、一定の呼気流速を保つことも重要です。なお、呼気に含まれるNOは機械の中でNO3-という物質を発生する際に電流を生じ、この電流をFeNO値として検出しているというのが当院で採用している機械の仕組みです。

当院での呼気一酸化窒素濃度(FeNO)検査

当院では検査時にわかりやすいようにお声がけをさせて頂くため、皆さまが検査前にご心配なさる必要はありませんが、上のグラフは正確な検査方法が非常に重要であることを表していると言えます。

喘息でお悩みの方は近年非常に多くなっており、当院では喘息/長引く咳の専門的な治療を行うことができます。FeNO検査は喘息治療に大きく役立つだけでなく、長引く咳が気になる方の気道の炎症状態も確認することができるため、ご自身の気道の状態を把握したいというご希望がある方も、いつでもご相談ください。

お電話でのご予約お問い合わせも受け付けております。

電話 03-5738-8660

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