甲状腺疾患
甲状腺の異常で見られる症状一覧
- 動悸が続く
- 体重が急に減った、または増えた
- 疲れやすく、だるい
- 手が震える、汗をかきやすい
- 首にしこりのようなものを感じる
その症状は、【甲状腺】の病気が関係しているかもしれません。
甲状腺の異常は、気づかないうちに体のさまざまな不調を引き起こすことがありますが、適切な治療でコントロールが可能です。
少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
甲状腺ってどんな臓器?
甲状腺は、首の前面(のどぼとけの下)にある、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。
体のエネルギー代謝や体温、心拍数、気分などをコントロールする「甲状腺ホルモン」を分泌しています。
例えるなら、体のエンジンを動かすアクセルのような存在です。
甲状腺ホルモンの主な働き
- 体温の調節
- 心臓の拍動のコントロール
- 代謝のスピードを調整
- 気分や精神状態の安定
- 肌や髪の健康維持
甲状腺ホルモンには主にT4(サイロキシン)とT3(トリヨードサイロニン)の2種類があり、これらがバランスよく保たれることで、私たちの体は元気に動いています。
例えるなら、甲状腺ホルモンは体のエンジンをスムーズに動かす「アクセル」のような存在です。多すぎても少なすぎても、体にさまざまな不調が現れてしまいます。
甲状腺の病気にはどんなものがあるの?
甲状腺の病気(甲状腺疾患)は、大きく次の2つのタイプに分けられます。
①甲状腺ホルモンの分泌異常
ホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症(中毒症)」や、分泌が不足する「甲状腺機能低下症」が含まれます。
②腫瘍性疾患
甲状腺にしこり(結節)ができる病気で、良性の場合もあれば、まれに悪性(甲状腺がん)であることもあります。
それぞれのタイプについて、以下で詳しくご説明いたします。
①甲状腺ホルモンの分泌異常について
甲状腺ホルモンのバランスが乱れると、体のエネルギー代謝や心臓の働き、気分などに影響が現れます。
この分泌異常は、大きく分けて「ホルモンが多すぎる状態(甲状腺中毒症)」と「ホルモンが足りない状態(甲状腺機能低下症)」の2つに分類されます。
甲状腺中毒症(ホルモンが多すぎる状態)
甲状腺中毒症では、体内に甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が必要以上に活発になります。
例えるなら、体のアクセルを踏みっぱなしにしているような状態で、心身にさまざまな負担がかかります。
よく見られる症状
- 動悸(胸がドキドキする)
- 暑がり、汗をかきやすい
- 手の震え
- 疲れやすい
- 体重が減る
- イライラしやすい
- 下痢
人によって見られることがある症状
- 目が飛び出して見える(眼球突出)
- 生理不順
- 筋力の低下
- 不眠
- 抜け毛
- 頭痛
主な原因疾患
- バセドウ病
体の免疫が甲状腺を過剰に刺激してしまう自己免疫疾患です。若い女性に多く見られます。 - 無痛性甲状腺炎
一時的な炎症によって甲状腺ホルモンが急激に放出される病気です。症状は自然に治まることもあります。 - 中毒性結節性甲状腺腫
甲状腺の一部にできた結節がホルモンを過剰に分泌する状態です。
甲状腺機能低下症(ホルモンが足りない状態)
甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンが十分に作られなくなり、体の代謝機能が低下します。
例えるなら、体のエンジンの動きが鈍くなっているような状態です。
気づかないうちに進行していることもあり、注意が必要です。
よく見られる症状
- 全身のだるさ、疲れやすさ
- 寒がり(特に手足が冷たい)
- 顔や手足のむくみ
- 体重が増えやすい
- 動作がゆっくりになる
- 物忘れ
- 便秘
- 皮ふの乾燥
人によって見られることがある症状
- 抜け毛
- 声がかすれる
- うつっぽくなる
- 集中力が落ちる
- 生理不順(女性)
- めまい
- 関節や筋肉の痛み
主な原因
- 橋本病(慢性甲状腺炎)
免疫の異常により甲状腺が徐々に壊れていく自己免疫疾患です。特に中年以降の女性に多く見られます。 - 治療の影響によるもの
バセドウ病の治療後や甲状腺の手術、放射性ヨウ素治療後などに起こることがあります。 - 薬の副作用
一部の薬の副作用が原因となる場合があります。 - ヨウ素の摂取量の偏り
極端なヨウ素の不足や過剰摂取によっても甲状腺の機能が乱れることがあります。
※甲状腺ホルモンの異常による症状は、他の病気と似ていることもあります。
少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関での診察・検査をおすすめします。
②甲状腺の腫瘍性疾患について
甲状腺に“しこり”のような腫れができる病気を「腫瘍性疾患」と呼びます。
しこり(結節)の多くは良性ですが、まれに悪性(甲状腺がん)の場合もあります。
ここでは、それぞれの特徴をご説明します。
良性腫瘍(甲状腺結節)
甲状腺にできるしこりの多くは良性(がんではない)で、症状もほとんどありません。
そのため、定期的な検査による経過観察が基本となります。
良性腫瘍の特徴
- ゆっくりと大きくなる
- 痛みがないことがほとんど
- 健診や超音波検査で偶然見つかることが多い
ただし、まれに悪性に変化することもあるため、専門医による定期的なチェックが大切です。
甲状腺がん(悪性腫瘍)
甲状腺にできるがんは進行がゆるやかなものが多く、早期発見・早期治療を行えば治癒が見込めるがんです。
気になる症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
注意すべき症状
- 首にしこりが触れる
- 声がかすれる
- 食べ物が飲み込みにくい
- 首のリンパ節が腫れている
これらの症状がすべて甲状腺がんに直結するわけではありませんが、気になる場合は念のため検査を受けることが安心につながります。良性か悪性かの判断には、超音波検査や細胞検査などが必要です。
次に、当院で行っている検査や診断の流れについてご紹介します。
検査・診断について
甲状腺の病気が疑われる場合、いくつかの検査を組み合わせて、正確な診断を行います。
以下は、当院で行っている主な検査です。
血液検査
甲状腺ホルモンの量やバランスを調べる検査です。
T3、T4、TSHなどのホルモンの値に加えて、自己免疫疾患の有無を調べるための抗体(例:TRAb、TPO抗体など)や、必要に応じて腫瘍マーカーも測定します。
超音波検査(エコー)
甲状腺の大きさや形、腫れの有無、結節の性状、血流の状態などをリアルタイムで確認できる検査です。
その他の検査(必要に応じて実施)
場合によっては、より詳しい評価が必要となることがあり、専門の医療機関へのご紹介をさせていただく場合があります。
シンチグラフィ検査
微量の放射性物質を使って、甲状腺の機能や甲状腺ホルモンを産生する腫瘍の診断、甲状腺癌の再発や転移の診断などを評価する検査です。
穿刺吸引細胞診(FNA)
細い針で甲状腺のしこり(結節)から細胞を採取し、がんの可能性があるかどうかを調べる検査です。
治療について
甲状腺の病気は、種類や症状の程度によって治療法が異なります。
検査結果や診察内容に基づき、患者様一人ひとりに合った適切な治療をご提案します。
甲状腺中毒症(ホルモンが多すぎる状態)の治療
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている場合、以下の治療法が選択されます。
抗甲状腺薬の内服
ホルモンの分泌を抑える薬を服用し、症状をコントロールします。
放射性ヨウ素治療
甲状腺に取り込まれる放射性ヨウ素を使って、甲状腺の機能を落とします。
手術
腫れている甲状腺の一部または全部を切除します。症状が重い場合や薬が効きにくい場合に選択されます。
甲状腺機能低下症(ホルモンが少なすぎる状態)の治療
甲状腺ホルモン薬の内服
不足しているホルモンを補うため、毎日内服することで、体の状態を整えます。ほとんどの方が、この治療で安定した生活を送ることができます。
腫瘍性疾患(しこり・甲状腺がんなど)の治療
腫瘍の性状や大きさ、悪性の可能性の有無に応じて、以下の治療を行います。
経過観察(良性の場合)
しこりの変化を定期的に超音波検査などで確認し、必要があれば治療方針を見直します。
手術
甲状腺の一部または全体を切除します。がんと診断された場合や、大きなしこりがある場合に行われます。
放射性ヨウ素治療
手術後に残った甲状腺細胞や、転移の可能性がある細胞を狙って治療する方法です。
分子標的薬
進行した甲状腺がんに対して、がん細胞の働きを狙って抑える新しい治療法です。
※治療は病気の種類や進行度、患者さんの体調・ご希望をふまえて一緒に決めていきます。
不安な点があれば、どんなことでもご相談ください。
受診の目安と当院のご案内
次のような症状がある場合は、甲状腺の病気が関係している可能性があります。
- 首にしこりや腫れを感じる
- 動悸や手の震えが続く
- 体重が急に増えたり減ったりした
- 疲れやすく、元気が出ない
- 気分の浮き沈みが大きくなってきた
「こんなことで受診していいのかな?」と迷われる方も少なくありません。
しかし、ちょっとした違和感が病気の早期発見につながることもあります。
ご自身の体のサインに、ぜひ耳を傾けてみてください。
甲状腺の病気は、適切な診断と治療を行えば、ほとんどの場合しっかりとコントロールできる疾患です。
「なんとなく不調が続いている」「年齢のせいかもしれない」と思われがちな症状の中にも、実は甲状腺の異常が隠れていることがあります。
当院には、甲状腺疾患に精通した専門医が在籍しており、丁寧な問診や検査を通じて、症状や生活スタイルに合わせた適切な対応を行っています。
また、より専門的な検査や手術などが必要な場合には、提携している専門病院と連携しながら、適切な医療をご提供しております。
気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
ご予約
当院では患者様のお待ち時間を少しでも少なく、診療をより丁寧にという思いから、
完全予約制とさせていただいております。
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