糖尿病
はじめに
エフユークリニック糖尿病グループの思い
90歳を超えても元気に通院される方もいれば、30代や40代といった働き盛りの方が、脳梗塞や心筋梗塞で救急搬送されるケースも少なくありません。その背景には、健診で血糖値や血圧の異常を指摘されながらも、「症状がないから大丈夫」と放置してしまった方もいます。また、「薬を飲むと一生続けなければならない」といった不安から治療を見送った結果、後遺症や長いリハビリが必要になる場合もあります。実際、大きな病気を経験した後で「やっぱり治療しておけばよかった」と後悔する患者さんも多くいらっしゃいます。
血糖値や血圧の治療を外来で提案すると、患者さんからはさまざまな理由で治療に消極的な反応が返ってきます。「今は何ともないから大丈夫」「薬に頼りたくない」「もう少し食事や運動で改善したい」といった声がよく聞かれます。しかし、じっくりと時間をかけて、治療をしないリスクや治療によるメリットをお伝えすると、「治療を始めたい」「そんな話は初めて聞いた」と前向きになる方も少なくありません。もちろん、治療を受けないことが必ずしも大病につながるわけではありませんが、患者さん自身が正しい知識を持ち、自分の意志で治療方針を選べることが重要です。
私たちエフユークリニック糖尿病グループは、患者さんが後悔しない選択をできるよう、必要な情報や知識をしっかりお伝えしていくことを心がけています。症状が出る前に適切な治療を受けることで、将来のリスクを減らし、健康な生活を送るためのお手伝いをしていきたいと考えています。
糖尿病とはどのような病気か?
糖尿病はどんな病気?
糖尿病は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の効果が弱まることで発症する病気です。
主な原因は以下の2つです。
- インスリン分泌の低下:膵臓がインスリンを十分に分泌できなくなる。加齢、遺伝、アルコールなどが要因。
- インスリン抵抗性:インスリンが効きにくくなる状態。肥満や脂肪肝などが原因。
血糖値はインスリン分泌とインスリン抵抗性のバランスで保たれていますが、このバランスが崩れると糖尿病になります。
どうなったら糖尿病と診断される?
糖尿病を診断するためには、以下の検査が行われます:
HbA1c
過去2か月の血糖値の平均を示す指標です。基準値は6.5%以上です。
血糖値
- 空腹時血糖:126mg/dL以上。ご飯を食べずに測る血糖値が126以上
- 随時血糖値:200mg/dL以上。食後からの時間を決めない状態で測定した血糖値が200以上
これらの基準値を満たしている場合、糖尿病と診断されます。
よくある症状
初期段階では無症状のことが多い
重度になると以下のような症状が見られます
- 喉の渇き。
- 尿の量が増える(頻尿)。
- 体重が減少する。
症状がなければ問題ない?
症状がなくても糖尿病を放置すると以下のリスクがあります
- 網膜症、腎症、神経障害といった3大合併症。
- 脳梗塞や狭心症などの心血管疾患。
- 寿命が短くなる可能性。
治療の重要性
症状がないうちに治療を開始することで合併症を予防し、健康な生活を維持できます。
糖尿病の治療
HbA1cの目標
糖尿病治療において、HbA1cは血糖値の目標を示す重要な指標です。65歳未満では7%未満を目標とするのが一般的ですが、低血糖リスクがある場合や治療が困難な場合には、目標が緩和されます。65歳以上では、患者の健康状態や認知症の有無に応じて、HbA1cの目標が個別に設定されます。各患者が自分に合った目標値を理解し、それを達成することが大切です。
食事療法
食事療法では、必要なカロリーを把握し、適切な栄養バランスを維持することが重要です。炭水化物、タンパク質、脂肪のバランスを意識し、特にソフトドリンクの摂取を控えることが推奨されます。また、規則正しい食事を心がけ、朝昼晩の食事量を均等にすることが理想です。
運動療法
運動には、血糖値の改善、インスリン抵抗性の改善、体重減少など多くの効果があります。有酸素運動(ウォーキング、ジョギング)とレジスタンス運動(筋トレ)の組み合わせが推奨されます。運動の頻度は、有酸素運動は週3回以上、レジスタンス運動は週2回程度が理想的です。ただし、低血糖や合併症に注意しながら行うことが必要です。
薬物療法
糖尿病治療薬は、インスリンや血糖降下薬など、患者の病態やリスクに応じて選択されます。薬剤の選択では、血糖値の安定だけでなく、低血糖のリスク、心腎保護効果、体重への影響、患者のライフスタイルも考慮されます。
包括的治療の重要性
糖尿病治療では、血糖値だけでなく、血圧や脂質の管理も重要です。包括的治療によって、心血管疾患のリスクや合併症の発症を大幅に抑えることができます。
糖尿病治療は、血糖値のコントロールに加え、個々の健康状態やライフスタイルに合わせた包括的なアプローチが重要です。目標値を理解し、適切な治療を継続することで、合併症のリスクを減らし、健康的な生活を維持しましょう。
糖尿病に関するよくある誤解
砂糖を摂りすぎると糖尿病になる
これは誤解の一つです。砂糖の摂取そのものが糖尿病の直接の原因ではありませんが、高カロリーな食品の過剰摂取が肥満を招き、糖尿病のリスクを高めることがあります。糖尿病はインスリンを出す力と効きにくさのバランスが崩れることで発症します。
症状がないから大丈夫
糖尿病は症状がなくても合併症が進行する可能性があり、注意が必要です。喉の渇きや尿量の増加などの症状が現れるのは進行した場合です。神経障害、網膜症、腎症といった3大合併症や動脈硬化による全身の合併症が、無症状でも進むことがあります。
食事に気をつけて、体重を減らせば良くなる
食事制限や体重減少は糖尿病管理に重要ですが、それだけでは不十分な場合もあります。遺伝的要因でインスリンを出す力が低下している場合や、肥満がない場合には、食事や体重管理だけでは血糖値が十分に下がらないこともあります。適切な治療を併用することが必要です。
最後に
今一度、糖尿病治療の目標を再確認してみましょう
糖尿病治療の目標は、「糖尿病がない人と変わらない人生」を送ることです。治療に対してストイックになりすぎるのではなく、時には息抜きをしながら適切な距離感で付き合うことが大切です。過度な自己責任感は精神的な負担となるため、治療のメリハリを意識しながら、合併症を防ぐ治療を続けていきましょう。
不安な症状がある方、治療を始めるべきか迷っている方、そして現在治療中でお悩みを抱えている方も、ぜひ一度ご相談ください。
私たちエフユークリニック糖尿病グループは、皆さまに寄り添いながら、適切な治療とサポートで健康を支えていきます。
ご予約
当院では患者様のお待ち時間を少しでも少なく、診療をより丁寧にという思いから、
完全予約制とさせていただいております。
web予約をご利用いただいた患者様は、web問診をご記入いただきますと、クリニックでの問診記載が不要になり、よりスムーズにご案内が可能です。お電話でのご予約お問い合わせも受け付けております。
参考文献
- 糖尿病治療ガイド2022-2023 編著:日本糖尿病学会
- Peter Gaede et al. Effect of a multifactorial intervention on mortality in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2008 Feb 7;358(6):580-91.
- Diabetes Care. 2022;46(Supplement_1):S140-S157. doi:10.2337/dc23-S009